いま足元でなにが起こっているのか...

物事を客観的に捉え、何をしなければならないかを冷静に考えるヒントをピックップします。主観は排除し、過去の常識にとらわれず、「Opinion」ではなく「Fact」を伝えることをモットーとしています。転ばぬ先の杖...それがこの“Sheel Report ”です。

金融庁報告書を徹底分析 ~ まるで金融商品販売パンフレット

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老後のために資産運用しよう...!!

金融庁報告書がテレビ等で大きな話題となっています。

    100年安心年金プランは一体なんだったのか...
    老後生活は本当に大変なのか...

話題はこの二つに集中しているようです。

 この騒動を受けて、安倍政権や自民党幹部らが「誤解を与える」「国民に不安を抱かせる」などと金融庁を激しく批判すると、担当閣僚(金融担当大臣)である麻生太郎副総理兼財務相は報告書の受け取りを拒否してしまいました。

そして衆議院財務金融委員会において、金融庁の三井秀範企画市場局長は、「世間に著しい誤解や不安を与えた。配慮を欠いた対応でこのような事態を招いたことを反省し、深くおわび申し上げます」と述べて謝罪しています。

政府が言う「誤解」とはいったどのようなことなのでしょう。この報告書は国民にどのような不安を抱かせるのでしょうか。

そして一連の行為において、金融庁は謝罪すべきことなのでしょうか。


金融庁報告書の解釈「年金制度は危ない、だから運用しよう...」
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6月3日付けの報告書は、金融庁ホームページで見ることができます。

目次を見ますと、報告書は要約すると
   現状分析 → 考察 → 対策
という構成になっていて、最期の「対策」の部分をそのまま載せますと

3、考えられる対応
(1)個々ひとにとっての試算の形成・管理での心構え
(2)金融サービスのあり方
(3)環境整備
ア,資産形成・資産承継制度の充実
イ,金融リテラシーの向上
ウ,アドバイザーの充実
エ,高齢顧客保護のあり方

とあります。これを高橋洋一嘉悦大学教授は金融商品販売パンフレット」と表現しています。

この報告書を作成した金融審議会ワーキンググループ・メンバーの顔ぶれは、金融関係者や市場関係者が多く、世界有数のヘッジファンドであるブラックストーン・グループ・ジャパン株式会社の特別顧問や日本のファイナンシャル・プランナーの重鎮、専門誌「投資信託事情」発行人編集長、セゾン投信式会社社長や
みずほや野村のシンクタンクの人などになっています。

この観点から報告書を見るとすると

    年金だけでは老後資金は足らないから、いまから運用しよう...

という誘導が透けて見えてきます。


金融庁報告書の解釈「年金制度は危ない、だから増税は仕方が無い」
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金融庁報告書を、見る立場によって異なるという観点で、次のような解釈も考えられます。

それは金融庁財務省管轄にあり、金融庁の役人は財務省から来ていることを踏まえ、今のままでは年金制度は維持できないので、だから増税は仕方がないという方向に持っていこうとしているのではないかという見方です。

具体的には、消費税率引上げを正当化しようという思惑があるのではという見方です。

なぜこの時期にこのような報告書が発表されたのかという疑問に対して、10月の消費税率引上げを踏まえての財務省のアピールではと、元財務省僚の意見です。

世間では、秋の消費税率引上げはまた延期されるのではないかという憶測もあり、国民はそれを望んでいる風潮があるという財務省の危機感の表れではないかとのことです。

社会保障制度維持には増税やむなしという意識を持ってもらいたいのでしょうか。

   年金制度は危ない、だから増税は受け入れよう...

という感じですかね。


金融庁報告書の対策方針には異論がないはずの政権側
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ここまで、金融庁報告書が示す「対策」に関しての二つの見方をご紹介しました。

いずれも現政権を援護するものとなっていて、おそらくこの両方の解釈に政権側は、異論を唱えることはなかったはずです。

「100年安心」年金プランを策定した小泉政権下では、同時に貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げていました。

当時から年金だけに老後生活の原資を依存するのではなく、自助努力も必要という姿勢を訴えていましたからね。

小泉・竹中ラインは一貫して「自己責任」を強調していましたので、当時から「公助」と「自助」のバランスの必要性は訴えていたと思われます

今思えば、「100年安心」というキャッチフレーズに、私たちが勝手に年金依存度を高めていたのかもしれません。

日本人は「自助」に慣れていないし、「自己責任」概念に弱いですからね。

ただ、金融庁(その背後の財務省)や政府にとって意外だったのは、「2000万円資産形成」への想像以上の国民の過剰反応だったのではないでしょうか。

野党による「100年安心」年金プランへの攻撃もあり、国民の不信から年金制度への不安が高まったことに、政権としては危機感を募らせたのでしょう。


金融庁報告書の「現状分析」に噛み付いた政権側
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年金制度の将来が危ないから自分達で2000万円を準備しなければならない...

金融庁報告書がこのように解釈されているようです。小泉政権下で「公助」と「自助」の必要性は国民には浸透していないということが、よく理解できます。

国民は、頭では年金制度の未来は暗いと分かっていながら、どこかで制度に頼ることに固執し、心の中では「国がやることだから大丈夫」と根拠のない年金制度への信頼を高め、行動レベルでは何も対策を講じないという状況を続けてきたのでしょう。

もともと根拠がない年金制度への安心感が、はっきりと目の前で「は大丈夫ではない」と政府機関にはっきりと示されたことに動揺したのでしょう

それでも「自助」に舵を切ることなく、自分達で資産形成をする行動には出ないで、政府が発する「大丈夫」というメッセージにすがろうとしてるのが、手に取るようにわかります。

政府の「大丈夫」メッセージが

    金融庁が勝手にやったこと
    金融担当大臣(麻生太郎財務大臣兼務)はあずかり知らないこと

として、金融庁報告書を「なかったもの」としようとしているようです。

これが政権や自民党幹部の「誤解を与える」「国民に不安を抱かせる」発言に繋がっているようです。

でも本音は二階自民幹事長の

    金融庁は)候補者に迷惑をかけた...

に表れています。全ては参議院選挙が大事、「国民に」ではなく「候補者に」という表現に、政権や自民党の狼狽の本音が表れているようです。

さてここでは、その「無かったもの」としようとしているものを、思いきり掘り出してみましょう。

何を無かったものにしたかったのかを探ることで、金融庁報告書の真意を読み取っていきましょう。


☆書き換えられた金融庁報告書の「変更・削除部分」に真実が...
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金融庁報告書には「案」というものがあります。5月22日に出されたものです。

その後6月3日に正式に発表されたようで、金融庁ホームページには6月3日付けの報告書が掲載されています。

この10日間の間に、内容が変更削除された部分があります。

わたしも最初に目にしたものが5月22日分の「案」のほうで、その後の報道内容には少し違和感を覚えていました。

内容が変更されていたのですね。

金融庁ホームページ掲載の報告書をもとに、「案」から変更された部分を指摘してみます。金融庁ホームページ掲載の6月3日分をもとに、5月22日(案)との変更点を指摘しています。

○一つ目は

目次 1,現状整理(高齢化社会を取り巻く環境変化)
     (2)収入・支出の状況
       ウ,退職金給付の状況     P.13

6月3日の報告書には

わが国に根付いてきた賃金制度として、退職給付制度がある。かつては退職金と年金給付の二つをベースに老後生活を営むことが一般的であったと考えられるが、公的年金とともに老後生活を支えてきた退職金給付額は近年減少してきている...


とあり、この「公的年金とともに老後生活を支えてきた退職金給付額は近年減少してきている。」という部分が、5月22日(案)では


わが国に根付いてきた賃金制度として、退職給付制度がある。かつては退職金と年金給付の二つをベースに老後生活を営むことが一般的であったと考えられる。

   ~ここまでは同じ、以下が変更前の文章です~

しかし、長寿化による影響はもちろんのこと、公的年金の水準が当面低下することが見込まれていることや退職金給付額の減少により、こうしたかつてのモデルは成り立たなくなってきている...


はっきりと「かつてのモデルは成り立たなくなってきている」と述べています。


○次に二つ目は

目次  2,基本的な視点及び考え方

にある4つの見出しは、全て表現が変わっています。

6月3日のものは
(1)長寿化に伴い、資産寿命を延ばすことが必要 ...................... 21
(2)ライフスタイル等の多様化により個々人のニーズは様々 ............ 23
(3)公的年金の受給に加えた生活水準を上げるための行動 .............. 24
(4)認知・判断能力の低下は誰にでも起こりうる ...................... 24

5月22日(案)のものは
( 1 ) 資産寿命の延伸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1
( 2 ) 個々人のニーズの多様化・・・・・・・・・・・・・・・2 3
( 3 ) 自助の充実の必要性・・・・・・・・・・・・・・・・・2 4
( 4 ) 認知・判断能力の低下・・・・・・・・・・・・・・・・2 4

それはともかく、ここで指摘するのは P.24 で

(3)公的年金の受給に加えた生活水準を上げるための行動

の項目が、5月22日(案)では、目次では

( 3 ) 自助の充実の必要性

とし、本文ではこの部分の項目見出しが

(3)公的年金だけでは望む生活水準に届かないリスク

となっていました。この項目が

(3)公的年金の受給に加えた生活水準を上げるための行動

に変わっているのです。直接的表現が避けられていますね。

またその項目の説明文に、6月3日分には「マクロ経済スライドという言葉を用い、年金制度維持を強調しています。

6月3日分と5月22日(案)で変わった部分を掲載します。前段が6月3日分、後段が5月22日(案)です。


公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いないが、少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していくことを踏まえて、年金制度の持続可能性を担保するためにマクロ経済スライドによる給付水準の調整が進められることとなっている。こうした状況を踏まえ、今後は年金受給額を含め
て自分自身の状況を「見える化」して、自らの望む生活水準に照らして必要となる資産や収入が足りないと思われるのであれば...


公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いないが、少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していく以上、年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい。今後は、公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある。年金受給額を含めて自分自身の状況を「見える化」して老後の収入が足りないと思われるのであれば...


テレビ等のコメンテーター発言で政権擁護と見られる立場の人は、「自助」の必要性を「自らの望む生活水準」を求めるならとし、年金だけでも最低限の生活はできるかのようなニュアンスでコメントしているのが目立ちます。

また国会答弁で安倍総理が、「100年安心」年金プランは破綻しているのではとの問いかけに対し、マクロ経済スライドを持ち出して年金制度の維持は可能であることを強調していました。

そのあたりを5月22日(案)では、「年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい。今後は、公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある。」と、より直接的な表現を使い、年金だけでは老後生活を維持するのは困難であると明確に述べています。

このことに関して金融庁は「客観的に修正することが望ましいということで、より客観的な表現ぶりに改めた」と説明し、さらに「公的年金の在り方について審議をしたものではない」と釈明しました。

確かに年金制度そのものを作るのは厚生労働省であり、金融庁は資産運用ありきで、民間金融機関同様、年金不安を煽っているに過ぎないとも取れます。

金融庁は「貯蓄から投資へ」の旗振り役ですから、金利低下で困窮する金融機関救済の観点から、国民に投資信託を買ってもらうために金融機関の援護を行ったとも言えます。

もう一つは財務省の立場から、消費税率引き上げの正当性を後押ししたとも取れるとの意見もありましたね。

「2000万円資産形成」という具体的な数字に多くの国民が強く反応し、年金制度に対する直接的な表現、つまり、年金額だけでは、そもそも老後生活を送ることはできないとしたところに、野党がこぞって「100年安心」年金プランの破綻を指摘してきたことに、参議院選挙を控えている時期だけに、政権側や与党は、か
なり神経質になったのでしょう。

二階自民党幹事長の「候補者に迷惑」発言も、思わず出てしまった本音なのでしょうね。



☆政府機関が発表する「2000万円」という数字に重みが...
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政治評論家の伊藤惇夫氏は

民間機関では以前から「年金だけでは老後生活は足りない」と言っていたことで、それを政府機関が言ったことが大事...

と発言しています。

金融機関によってはまちまちですが、必要老後資金を「3000万円」とするところが多かったようで、その数字には説得力がある根拠が無かったのですが、それを政府機関が、根拠に基づいて「2000万円」と表現したことに重みがあります。

その根拠となるデータは厚生労働省発表のものです、しかも報告書は担当である金融担当大臣の目を通っているはずだとの指摘もあります。

金融庁金融審議会の報告書に関し、麻生太郎金融担当相は11日の閣議後記者会見で、正式な報告書としては受け取らない意向を表明した際に、「著しい不安とか誤解を与えており、政府のこれまでの政策スタンスとも異なっている」と説明していますが、「政府のこれまでの政策スタンス」というところには大いに疑問が
残ります。

金融審議会は報告書提出までに12回も協議をして、報告書を提出すると設定しているにも拘らず、「正式な報告書」ではないとする麻生大臣ですが、ここまで税金を使って協議をしたものを、一蹴のもとに「ないもの」にするのはいかがなものかと思いますよね。

安倍総理を含め、政権側が報告書に関して関与していないことは考えづらいです。

果たして金融庁が謝る話しだったのでしょうか。

政治評論家の伊藤惇夫氏は、金融庁の謝罪も含め、政権や自民党よる一連の金融庁に対する態度を見て

    今後政府に都合が悪いデータは出なくなるかも...

と危惧していると発言しています。


☆ちなみに「マクロ経済スライド」とは
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厚生労働省のホームページに「マクロ経済スライド」の解説が載っています。

マクロ経済スライドとは、そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みですとあります。

平成16年(2004年)に改正する前の制度では、将来の保険料の見通しを示した上で、給付水準と当面の保険料負担を見直し、それを法律で決めていました。しかし、少子高齢化が急速に進む中で、財政再計算を行う度に、最終的な保険料水準の見通しは上がり続け、将来の保険料負担がどこまで上昇するのかという懸念も
ありました。

そこで、平成16年の制度改正では、将来の現役世代の保険料負担が重くなりすぎないように、保険料水準がどこまで上昇するのか、また、そこに到達するまでの毎年度の保険料水準を法律で決めました。また、国が負担する割合も引き上げるとともに、積立金を活用していくことになり、公的年金財政の収入を決めました。

そして、この収入の範囲内で給付を行うため、「社会全体の公的年金制度を支える力(現役世代の人数)の変化」と「平均余命の伸びに伴う給付費の増加」というマクロでみた給付と負担の変動に応じて、給付水準を自動的に調整する仕組みを導入したのです。この仕組みを「マクロ経済スライド」と呼んでいます。

以上が厚生労働省「いっしょに検証!公的年金」というサイトに書かれているものです。

これがあるから年金制度は安泰だ、年金制度はなくならないと安倍総理は国会で答弁していました。

実は、わたしも大きな勘違いをしていました。

「100年安心」とは、国民が年金を100年間もらえるというのではなく、年金制度そのものが100年間は維持できるということだったのです。

厚生労働省HPにもあるように、保険料は上がり続けることを決め、税金投入も決め、積立金も給付に使えるようにし、給付額を経済状況に応じて調製することがマクロ経済スライド」だと説明しているのです。

これを双日総合研究所吉崎達彦氏がうまく表現しています。

年金制度という「船」は100年間沈まないようにしたのが「100年安心」年金プランです。

つまりどんなことがあっても「年金制度」という船は沈まない、だって状況に応じて保険料を引き上げ、給付額を引き下げることができるようになったのですから、収入は確実に増やし支出は状況に応じて減らしても良いということにしたわけですから、船自体は壊れないが、船に乗ってい人のことはわからない、場合に
よっては船から降りてもらうことだってある、客室クラス変更をお願いすることもある...

    船は安心、乗っている人のことは知らないよ...

これが「100年安心」の年金「制度」です。

政府にとって「安心」だったのか、大きな勘違いをしていました。

そして、国民・厚生年金は「保険」であり、正しくは国民年金保険、厚生年金保険なのです。

2004年「100年安心」年金プラン策定に財務官僚としてかかわった高橋洋一嘉悦大学教授は、当時の制度設計者として年金制度を

   平均寿命よりも早く死んだ人のとり分を、
   平均寿命よりも長生きした人のまわす制度

と称していました。

若者が払う保険料が高齢者の給付金の原資となる、まさに保険制度です。国民年金や厚生年金は「保険制度」なのです。

保険料を払った分だけ将来は年金としてもらえるという考えは間違いで、若者の払う保険料は、今の高齢者が受け取るもので、死亡したら給付は終わるもので、保険料未納を「罪」と罰するのは、今の高齢者を救うためで、社会的秩序と道徳の観点から、年金保険料は払う義務があるのです。

だって法律で、年金制度は「国民の共同連帯」とうたっていますからね。

いまや若者は、就職企業を選ぶのに「社会保障の充実」は選択理由にはなっていないようです。自分達は年金はもらえないと思っているようですね...


☆最期のまとめ
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いろんな報道機関が報じている内容を総合すると...

令和元年(2019年)5月22日に開催された「金融審議会『市場ワーキング・グループ』(第23回)」においての、「『高齢社会における資産形成・管理』報告書(案)」は、人生100年時代に向け、長い老後を暮らせる蓄えにあたる「資産寿命」をどう延ばすかという問題などについてまとめられたものです

そこには、働き盛りの現役期、定年退職前後、高齢期の3つの時期ごとに、資産寿命の延ばし方の心構えが示されています。

報告書(案)では、「公的年金の水準については、中長期的に実質的な低下が見込まれているとともに、税・保険料の負担も年々増加しており、少子高齢化を踏まえると、今後もこの傾向は一層強まることが見込まれる」と指摘しています。

さらに、具体的な内容にも触れ、年金だけが収入の無職高齢夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)だと、家計収支は平均で毎月約5万円の赤字。蓄えを取り崩しながら20~30年生きるとすれば、現状でも1,300万円~2,000万円が必要になり、長寿化で、こうした蓄えはもっと必要になるとしています。

その上で、現役期は「少額からでも資産形成の行動を起こす時期」とし、生活資金を預貯金で確保しつつ、長期・分散・積み立て投資が必要としています。

具体的な方法としては、「つみたてNISA」や、個人型の確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」などがあげられています。

資産運用に誘導することはともかくとして、今回の金融庁報告書は、正直に、ありのままの現状を捉え、正確に未来予想を示してくれています。

金融庁は、私たちの将来を心配して、嫌われるのを覚悟で、このような報告書で危機意識を持たせてくれたのです。

☆追記:「平均値」と「中央値」について
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2018年11月9日付で公表されている金融広報中央委員会「知るぽると」による、「家計の金融行動に関する世論調査」(二人以上世帯調査)によれば、 金融資産(定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用の為または将来に備えて蓄えている部分)の保有額は、

   平均値は 1,151 万円
   中央値は、450 万円

と公表しています。   調査期間:2018年6月15日(金)~7月24日(火)

「平均値」と「中央値」に関しては、この調査報告書に解説があるので、そのまま掲載します。

金融資産保有額の平均値は 1,151 万円となるが、金融資産保有額が 1,151 万円を超えているのは2世帯だけなので、ほかの7世帯は「自分はそんなに多くの金融資産をもっていない」と感じるだろう。このように、平均値は少数の高額資産保有世帯によって大きく引き上げられることがあるため、平均値だけでみると、
多くの世帯が実感とかけ離れた印象をもつのである。

このような平均値の持つ欠点を補うために、ここでは平均値と並んで中央値を用いて一般的な家計像を捉えることとする。ここで言う中央値とは、調査対象世帯保有額の少ない順(あるいは多い順)に並べたとき、中位(真ん中)に位置する世帯の金融資産保有額のことである。例えば自分の金融資産保有額が中央値
(2018年調査では 450万円)である世帯からみると、保有世帯のちょうど半分の世帯が自分の金融資産保有額よりも多くの金融資産を保有し、ちょうど半分の世帯が自分の金融資産保有額よりも少ない金融資産を保有していることになる。従って、中央値は世帯全体の実感により近い数字になると考えられる。今回調査
では、金融資産保有額の中央値は 450 万円となっている。


老後資金として2000万円必要と言われて、多くの人たちが驚き慌てふためき、やがて怒りを感じるようになるのも、納得できるデータでしょう...


☆おまけ~財務検証公表遅れる
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政府は年金関連の検証を、金融庁報告書ではなく、公的年金制度の健全性を5年に一度チェックする財政検証に求めるようですが、その公表が、どうやら参議院選挙後にずれ込むようです。

財政検証は、公的年金の「定期健診」のようなもので、将来の人口や経済状況などの変化予測を踏まえ、おおむね100年間にわたる年金給付を試算し、制度が維持できるかを確認するものとされています。

2004年の年金制度改正で、年金の給付水準は現役世代の手取り平均収入の50%を確保することが法律に明記され、少なくとも5年に一度行う財政検証で、50%を下回ることが見込まれると、保険料や給付のあり方を見直すことになります。

ねぇ、年金制度という船は沈まないでしょう。保険料という収入は上げることが出来るのですからね。

今回の財政検証の結果次第で、給付水準が現行の見通しよりも下がることになれば、老後に必要な蓄えは金融庁審議会が試算した2000万円より大幅に増えることにもなりかねないとう指摘もあります。

給付額が下がる...やはり年金制度という船は大丈夫のようです

財政検証は2009、2014年に行われ、今回が三度目、今回は物価・賃金上昇率、積立金の運用利回りなど将来の経済前提について、経済成長の状況に応じ6通りで試算をするとのことです。

すごく気になる、われわれ国民としても是非見て見たい財政検証果ですが、例年なら既に公表されてもおかしくない時期に来ています。

2009年は専門委員会最終報告が2008年11月11日で公表が2009年2月23日、2014年は3月10日最終報告で公表は6月3日、今回の最終報告は3月7日に終わっています。

公表の遅れは以前にもあり、2016年、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、前年度の公的年金積立金の運用実績が5兆円余の赤字となったこと、例年よりも遅れて公表しました。

そうです、参議院選挙があったので選挙後に公表をずらしたのです

なんか公表結果、ちょっと厳しい内容になっているのかもしれませんね。

いずれにしても参議院選挙前には、どうやら私たちは見ることができないようですよ...