2050年カーボンニュートラル...
日本では菅総理が所信表明演説で、突然に、国内の温暖化ガス排出を2050年までに「実質ゼロ」にする方針を表明しました。
接戦を制したバイデン時期米大統領も、2020年1月の大統領就任初日に地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰の手続きを取る見通しで、2050年までに温室効果ガスの実質排出ゼロを目指すことも公約に掲げています。
ことばの整理ですが、「カーボンニュートラル」とは「気候中立」という日本語があてられていますが、環境省の定義によれば
市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等の社会の構成員が、自らの責任と定めることが一般に合理的と認められる範囲の温室効果ガス排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部を埋め合わせた状態をいう...
役所の定義なので、ややこしい言い回しがなされていますが、これを数式のように表現すると
ということです。
経済を動かす上で二酸化炭素を排出してもよいが、それは植物などの自然界で吸収できる範囲に抑えることで「プラスマイナスゼロ=実質ゼロ」にしようということです。
植物は、成長するために光を受けながら、大気中の二酸化炭素を吸収して酸素を排出するというもので、枯れていく過程では二酸化炭素を排出する側になるので、植物の一生そのものが「カーボンニュートラル」だという考え方です。
バイオマスエネルギーを使う場合、廃材などの有機燃料を利用した分、植林してカーボンニュートラルを保つというイメージですね。
環境省定義文の後半は、単体での実質ゼロを厳格にするのではなく、エリアごとにトータルで「プラスマイナスゼロ」にすれば良いという考え方です。
二酸化炭素排出量が少ない企業と多い企業があった場合、両方の企業の排出量を合算したものが、二酸化炭素吸収量と同じであれば良いという考え方です。
これを国単位で見れば、排出量の多い国は、排出量の少ない国から余った枠を買い取る「排出権取引」を認めようというもので、地球規模でお互いが協力しあって、二酸化炭素の排出量と吸収量を「プラスマイナスゼロ」にしようというものです。
菅総理やバイデン次期米大統領は、国単位で、二酸化炭素の排出量と吸収量を「プラスマイナスゼロ=実質ゼロ」にすると明言したのです。
炭素循環を壊すことが地球温暖化の原因
大気中には二酸化炭素がたくさんあります。
炭素の酸化物である二酸化炭素が大気にたまる量が増えることが、地球温暖化の原因として問題視されているというのが、今言われていることです。
ただ、炭素というのは大気中に限らず、地中や地表、水中にも存在します。
例えば地中にあるのは、石油、石炭、天然ガスといった化石燃料であり、地表には森林があります。
これらの炭素プール(炭素の貯蔵庫)は、地表、海、大気で炭素は循環するものの、それぞれの量は安定しています。
地中の炭素は人間が掘り出さなければ、固定されたものとして他の炭素プールに影響を与えません。
人類が化石燃料の使用によって、地中では固定されていた炭素をエネルギーとして利用して大気に放出しているため、大気の炭素濃度が上昇し、温暖化を引き起こしているというのです。
地中と大気の、炭素循環の安定性が崩れたのですね。
産業革命により生産活動が活発になり、また自動車や航空機の普及など、社会の利便性が増すことで、エネルギー需要は一気に高まりました。
自然界では、炭素は生物の呼吸、有機物の燃焼、腐敗などによって二酸化炭素の形で大気に放出されていますが、植物は光合成によって二酸化炭素を吸収し、海も大気と接することで二酸化炭素を吸収しています。
そこに、人間による化石燃料利用をにより、大気の二酸化炭素量が、吸収量を上回ったということですね。
これらの排出量と吸収量が等しく、元のバランスが変わらないようにすることが「カーボンニュートラル」です。
化石燃料を掘り出さなければ、地球規模で自然に「カーボンニュートラル」は成り立っていた、そのバランスを、人類がが壊したという考えのようです。
それゆえ脱炭素エネルギーという、二酸化炭素を排出しないエネルギーの重要性が増してくるのです。
二酸化炭素を吸収する側は変わらないのですからね。
だから、化石燃料ではないバイオマスエネルギーを活用したとしても
刈り取って燃焼利用した後、利用した分だけの量を植林する
ことが求められます。
そう考えると、自然発火でによるオーストラリアや米国の森林火災、生活のためのアマゾン森林伐採や、国策としての森林破壊は、地球温暖化にとっては重大な問題と言えますね。
経済を優先させることで地球が破壊される...
トランプ政権がパリ協定に参加しないのも、国内産業を優先した結果であり、トランプ大統領支持者へのアピールとして、二酸化炭素削減よりも産業を優先する姿勢を見せたということで、今の日本の新型コロナウイルス対策と似ているような気がします。
感染者拡大対策優先か、経済復興を優先するか...
産業を守るか環境を守るか、感染者拡大阻止か経済優先か、これらは両立できないものなのでしょうかね。
ただ地球環境を考える流れは、それまで地球温暖化に非積極的だった中国が、その姿勢を変えたことで変わってきました。
まさに中国が、自国産業優先による世界的温暖化対策無視の姿勢から、「カーボンニュートラル」に積極的に取り組む姿勢を見せてきたことで、世界の流れを変えたと言えます。
バイデン次期米大統領の民主党は、オバマ政権時から地球温暖化対策には積極的であり、そもそも二酸化炭素を地球温暖化の主犯格にしたのが、アル・ゴア元副大統領の「不都合な真実」でしたからね。
それまでの地球温暖化の主犯格は、エアコンから出るフロンガスだったかと思います。
確か地球のオゾン層を破壊して、太陽の熱を直接地球上に浴びせたことによるという説ではなかったでしょうか。
二酸化炭素排出権取引は、「カーボンプライシング(Carbon Pricing)」の一環で、新しい金融取引となります。
この話も奥が深そうです。