いま足元でなにが起こっているのか...

物事を客観的に捉え、何をしなければならないかを冷静に考えるヒントをピックップします。主観は排除し、過去の常識にとらわれず、「Opinion」ではなく「Fact」を伝えることをモットーとしています。転ばぬ先の杖...それがこの“Sheel Report ”です。

JTB 資本金1億円に減額させて中小企業化する狙いは“節税”、「Go To トラベルキャンペーン」があったのに...

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JTB 中小企業化

23億円から1億円に...

国内旅行最大手のJTBが、資本金を1億円にまで引き下げようとしています。企業区分だと「1億円以下」は「中小企業」に分類されます。

あくまでも税制上の区分で、実際は、連結売上高1兆2885億円、従業員数はグループ連結で2万7000人に上る、立派な巨大企業です。

 2015年に経営が苦しくなったシャープが、1200億円以上あった資本金を1億円に減額したことが、大きく避難されました。

それは資本金減額の目的が、節税メリットを受けることにあり、当時経営再建中であったことから、違法ではないが一種のテクニック、“裏技”として使われたことに違和感を感じる人が多かったようです。

そもそも中小企業に税制上優遇するのは、企業を育てる意味合いがあるわけで、大企業の節税のためにあるわけではないという感情が強かったようです。

今回、JTBにが資本金を大幅に減額したことは、まさにこの“裏技”を使ったとうことは間違いないでしょう。

現在、スカイマークが90億円の資本金を1億円に、毎日新聞社も3月に41.5億円の資本金を1億円に圧縮する予定だそうです。

シャープのときは「経営の失敗」という烙印があり、それを“裏技”でなんとかしようとする姿勢が問われましたが、今回は、確かに突発的なことによる、自社の責任ではないことによる経営危機ではあります。

コロナだから許されるのか...

本来の中小企業優遇の目的から考えると、やはり“裏技”には違和感があります。

“裏技”ではない、真正面からの企業救済を、政府が考えることはできないのでしょうかね。

企業優遇と、ポピュリズムの人たちは非難するかもしれませんが、従業員にとっても「会社会っての働きぐち」ですからね。

 

中小企業の節税メリット

単純に法人税率だけを見れば、年800万円以下の部分の税率は15%、800万円超の部分は23.2%となります。

大企業(税制上での表現では「大法人」)の場合は、所得区分なく23.2%となります。

それだけでなく中小企業ならではの優遇特例があります。

  • 法人税の軽減税率
  • 欠損金の繰越控除制度の特例
  • 欠損金の繰戻還付
  • 交際費等の損金不算入制度の特例
  • 特定同族会社の留保金課税の適用除外
  • 貸倒引当金の適用

などがあります。

たとえば「欠損金の繰越」を考えると、大法人(税制上の表現で、大企業とイメージしても構いません)の場合は、繰越控除の限度額は「所得金額の50%」となっています。

これが中小法人(資本金1億円以下の中小企業)になれば「所得金額の100%」まで繰越控除ができます。

「欠損金の繰越」とは、“赤字額が引き継げる”ということで、今年の利益を、それまでの赤字額で相殺して、その年の利益を縮小することができるというものです。

その他、損金算入、いわゆる経費として認められる割合、主に交際費がどこまで経費として持ちめられるかの金額は、中小法人の方が枠は大きくなっています。

どう考えても、税金を収めることを考えると、明らかに資本金を1億円以下にしたほうが、納税額は低く抑えられます。 

 

減り続ける大企業

2015年のシャープによる資本金減額は、中小企業も税制上の特権を得るための批判から撤回されましたが、政府は法改正により、2019年度から、大企業並みの所得(過去3年の平均で15億円超。「所得」は、「益金」から「損金」を差し引いた税務会計上の利益)がある企業に対し、たとえ資本金が1億円以下であっても、中小向けの政策減税を打ち切ることを決めました。

前項で述べた「所得800万円」という縛りですね。

それでも大企業の数は、減り続けています。

国税庁統計によると、資本金1億円超の大企業は2018年度に1万8810社となり、前年度から516社減っています。2011年度(2万4380社)から7年連続で減少しています。

一方で、中小企業総数は2011年度259.8万社から、2018年度は274.7万社に増えています。

このことが、シャープやJTBにと同じように資本金を減額している大企業が増えたということにつながるかどうかはわかりませんが、やはり中小企業の税制優遇を取りに行くための中小企業化ということはあるのかもしれません。

もう一つ大きなものとして「外形標準課税」があると思います。

 

重要なのは「外形標準課税」

「外形標準課税」とは、企業の規模を税計算の対象とするもので、事業所の床面積や従業員数、資本金等及び付加価値など外観から客観的に判断できる基準を課税ベースとして税額を算定する課税方式のことです。

つまり、赤字だと税金がかからないということはなく、“赤字でも法人事業税はかかる”というものです。

この条件が、「資本金1億円超の大企業」に対して適用されるのです。

そうです。今の所中小企業に対しては「適用外」となっているのです。

ちなみに、今後法人税率引き下げとセットで、外形標準課税対象を中小企業にも適用することも検討されています。

あくまでも“今のところ”ということにはなります。

こう考えると、「資本金1億円“以下”なのか“超”なのか」の違いは、税制上では、かなり大きいようですね。 

 

上場していない大企業

 意外かも知れませんが、JTBは実は上場会社ではありません。マーケットに上場していないのです。

近畿日本ツーリストやHISは上場していますが、JTBは上場していないのですね。

他に有名な非上場企業としては

サントリー
ロッテ
竹中工務店
佐川急便
ヤンマー
カルピス
アサヒ飲料
日本IBM

一度は聞いたことがある、一度どころかとてもメジャーな企業がありますね。

上場しない理由としては、株主の存在を良しとするかどうか真理マスが、公開することで買収に危機にさらされることを恐れているということもあります。

裏を返せば「経営に自信がないのか」ということもありますが、上場しない理由として「財務諸表を公開しないで済む」というのが挙げられていることが気になりますね。

内情は外からではわからないものですが、JTBに関しては、本業である旅行業単体での収益はどうか、グループ全体での評価を求めているのではとも思えますね。

マンション販売業だと季節性が強く、四半期で見れば売上が立つ次期が極端に偏っていることも、収益安定性から上場を見送る事情もあるのかも知れません。

マイナス面だけでなくプラスの要素としても「敢えて上場しない」メリトを意識しているのでしょう。

 

「Go To トラベルキャンペーン」でたすけられている旅行業界

コロナ禍で、旅行業や観光業が大打撃を受けていることは確かです。

JTBとしても、グループ人員約2割の削減、国内店舗の約25%の統廃合を迫られてはいます。

ただ、観光業界は、政府肝いりの「Go To トラベルキャンペーン」で、特別に助けられているということもあります。

旅行代理店は、制度内容が変わることによるキャンセル料も、政府に負担してもらっています。政府の負担は「税金」です。

軽く2兆円を上回る事業規模で業界は助けられています。

巨額な税金で支えられているJTBの「節税目的」の資本金減額が、果たして一般国民に受け入れられるかどうかは、今後の世論の動きに注目していきたいですね...