無料通信アプリ「LINE」が、中国にある関連会社にシステム開発を委託するなどし、中国人技術者らが日本のサーバーにある利用者の個人情報にアクセスできる状態にしていたことがわかったと報じています。
また、利用者間でメッセージをやりとりするサービス「トーク」に投稿されたすべての画像と動画を韓国内のサーバーに保管していることがわかりました。
LINEを実質的に傘下に持つ韓国IT大手ネイバーのサーバーに保管しているとのことです。
そうした運用は、2012年ごろに「トーク」で画像や動画を扱うようになって以来続いているとのことです。
韓国のサーバーにはスマホ決済「LINE Pay(ペイ)」の取引情報も置かれていたようで、氏名や住所などは含まれていないとしています。
このサーバーには、韓国にあるLINEの子会社「LINEプラス」の社員がアクセスする権限を持っていて、見ようと思えば見ることができる状況だと言えます。
中国の委託先にも、日本のサーバーへのアクセス権を付与していたことが明らかになっています。
LINEはプライバシーポリシーでそうした状況を十分説明しておらず、対応に不備があったと判断し、政府の個人情報保護委員会に報告する一方、近く調査のための第三者委員会を立ち上げ、運用の見直しに着手するとしています。
個人情報保護法は、外国への個人情報の移転や外国からのアクセスに制限をつけ、必要な場合は利用者の同意を得るよう定めています。
LINEの規約は
お客様のお住まいの国や地域と同等の個人データ保護法制を持たない第三国にパーソナルデータを移転することがある
などとしているが、昨年6月に成立した改正個人情報保護法(2年以内に施行)に関し、個人情報保護委員会は、原則として移転先の国名などを明記するよう求めています。
急速に普及したLINEは、国や自治体の新型コロナの通知アプリに使われるなど社会インフラとしての性格を強めています。
このため同社は、規約の説明は不十分だったとして「正確、詳細な表現の検討を始める」としています。
LINEの出沢剛社長は23日夜の記者会見で、通信アプリの利用者の個人情報が業務委託先の中国の関連会社から閲覧可能になっていた問題に関して、
LINEはグローバルで成長してきたが、世の中の状況の変化で見落としてきたことが多かった。反省している...
と述べました。
国内月間使用者数8600万人、日本では殆どの人が使用していることになります。
ただ、膨大なデータを海外のサーバーで保管する企業は珍しくはありません。
これらの問題を踏まえ、国や自治体などが、LINE使用を停止する動きが相次いでいます。自殺防止を目的にした相談窓口も他のSNSに切り替えられるなど影響が広がっています。
厚生労働省は、ホームページに自殺防止に取り組む民間団体の相談窓口を掲載し利用を呼びかけていましたが、団体側と協議し、20日までに3団体がLINEの活用を取りやめ、他のSNSや電話に切り替えました。
LINEを含むSNS相談は、同省が補助金を出して2018年4月に本格的に始まり、2020年3月までに相談回数は延べ約6万8000件に上ったとのことです。
うち、LINEでの相談が84%(約5万7000件)を占めたというのです。
LINE活用を中止したNPO法人東京メンタルヘルス・スクエア(東京)の担当者は
相談内容には、家族にも知られたくない事情も含まれ、情報が漏れないことが一番大事だ。SNSの安全性を国が徹底して調査してほしい...
と話したとのことです。
千葉県も住民サービスなどに使うアカウント6件のうち4件の利用を停止したとのことです。うち1件は、ホテルや自宅で療養する新型コロナウイルス感染者の健康観察を目的にしたもので、当面は電話で代用するとしています。
大阪市は、子育てなどに関する生活情報の発信や、市立学校の児童・生徒からの悩み相談など約60のLINEによるサービスを停止することを決めました。
今回の問題で情報流出はなかったとLINE側は説明しています。
約900自治体が公式アカウントを保有しているということです。
自殺防止などを目的としたLINE相談は、緊急性が高いとして運用を続けるとのことです。
今多くの若者はLINE以外でのコミュニケーションを行っているのでしょうか。LINE利用を停止するのはわかりますが、現実ではどんな状況でも若者はLINEを使い続けるでしょうし、LINE以外のコミュニケーションを取ることは好まないのではないでしょうか...