これまでの感染対策に限界があったのは明らかだ...
1月21日の経済財政諮問会議で民間議員の新浪剛史氏(サントリーホールディングス社長)がこう発言し、再度の緊急事態宣言を招いた政府の新型コロナ対策を痛烈に批判しました。
国民は政府の対策について疑心暗鬼に陥っている...
政権に対して、情報発信の改善を求めました。
同時に「ワクチン一本足打法」へも警鐘を鳴らしています。
経済財政諮問会議とは、日本の内閣府に設置されている「重要政策に関する会議」の一つで、内閣総理大臣の諮問を受けて、経済財政政策に関する重要事項について調査審議するところです。
最も注目を浴びたのは小泉内閣のときで、竹中平蔵財政担当大臣が中心となって「骨太の方針」が出されたのが経済財政諮問会議です。
内閣総理大臣を議長に、官房長官に経済閣僚と呼ばれる財務大臣や経済財政担当大臣、経産大臣、そして総務大臣に加えて、日銀総裁や民間議員も参加します。
新浪剛史氏は、民間からの選出となっています。
マクロ経済を議論して今後の政策を話し合う、総理御前会議のようなものです。
コロナ禍においては、厚労大臣が臨時議員として参加しています。
1月26日に公開された議事要旨でわかったことですが、新浪氏はこの日の会議で「感染拡大、医療逼迫(ひっぱく)の状況を踏まえれば、クラスター対策中心のこれまでの感染対策に限界があったのは明らかだ」と指摘したのです。
緊急事態宣言を解除しても再び感染が広がる可能性があるとして、無症状感染者発見のためにPCR検査を民間機関とも連携して拡充することや、医療負担の軽減策として入院を高齢者や基礎疾患のある高リスク者に限定すること、利用が落ち込むホテルや旅館を転用して隔離・療養のための施設を十分に確保することなどを訴えました。
これらの対策はノーベル賞受賞者の山中伸弥京大教授らも提言しているとして、「最先端の科学的知見かつ国際的人的ネットワークを持っておられる方々と、無症状感染者への対応を極めて限定的なものとし、結果的に感染拡大をもたらすこととなってしまった対策に固執した感染症専門家の方々のどちらに耳を貸すべきなのか、今となっては明白ではないか」と、政策の転換を迫ったとのことです。
感染収束の「切り札」と政府が期待をかけるワクチンについては「普及するまでには、どんなに短くても4、5カ月かかる」とし、収束策をワクチン頼みにすることのリスクも指摘し、国民に対する政府責任者からの適時的確な情報提供についても、改善を求めたとあります。
新浪氏の発言に対しては政府側から会議中に直接の反応はなく、菅首相は締めくくりあいさつで「まずは感染を抑え込み、減少に転じさせるよう全力を挙げて参りたい」と述べたとのことです。
PCR検査検査をすることが、なぜかイデオロギー戦争のようになっています。
安倍政権当時はPCR検査拡充には消極的であったため、政権擁護の論客たちは、こぞって、無症状者特定のためのPCR検査拡充の主張と対立していました。
PCR検査機関が足りないなら民間機関を活用すればよいという提案も、検査の信用性や安全面から政府は否定的な態度を示してきました。
「政府が」という主語が正しいのか、「厚労省が」か「専門家が」が主語として正しいのか、わかりませんけどね。
まさにPCR検査を間に挟んだ「分断状態」でした。
当初のコロナウイルスへの対処方法は間違いだったのではないか...
海外では積極的にPCR検査を行うことで無症状者を特定していましたが、日本では、感染者の殆どが無症状で軽症者であることを「放っておいても治る」とし、約10%ぐらいの重傷者に集中して医療資源を投入すればコロナは克服できると考えていました。
その重傷者を調べるのに、PCR検査ではなく人海戦術でクラスターつぶしをする方法をとったのです。
なまじPCR検査をして陽性が判明したら病院がパンクするから、検査拡充しないほうがよいというスタンスでした。
その対策の修正が、ずっとできないできたのです。
一度決めた当初の方針が変えられなかったのです。
それは「厚労省が」という主語が正しのか「(政権に助言している)専門家が」なのかはわかりません。
その流れで、今回の新浪剛史氏の低減に繋がります。
もういい加減に見直しましょうよ...
今回、新浪氏は「ノーベル賞受賞者の方々の意見と政府が徴用した学者の言い分とどちらが正しいのか」と突きつけたのです。
いずれにしても、経済財政会議の民間議員が、政府の今までのやり方を改めるべきだと、新浪氏は主張しています。
事前に配られた「資料」に、新浪氏が書いたものをそのまま載せます。
無症状者が感染を広げているという科学的知見を直視し、無症状者への検査拡大と、隔離施設の大幅確保による隔離の徹底にかじを切るべき。同様の提案は、ノーベル賞受賞学者の方々からも出されており、これらの低減にこそ耳を傾けるべき...
2021年1月8日付けで、ノーベル医学生理学賞受賞の
大隅良典氏
大村智氏
本庶佑氏
山中伸弥氏
が連名で、政府に要望書を提出しています。
その内容は
1,医療機関と医療従事者への支援を拡充し、医療崩壊を防ぐ
2,PCR検査能力の大幅な拡充と無症状感染者の隔離を強化する
3,ワクチンや治療薬の審査及び承認は、独立性と透明性を担保しつつ迅速に行う
4,今後の新たな感染者発生の可能性を考え、ワクチンや治療薬の開発原理を生み
出す生命科学、およびその社会実装に不可欠な産学連携の支援を強化する
5,科学者の報告を政策に反映できる長期的展望に立った制度を確立する
以上、実際に書かれている内容をそのまま転載しました。
これを山中教授たちが政府に提言したということは、いままでこれらのことが、何一つなされていないということになります。
ただ、これら経済界や学者の人たちが声を上げても、どうも菅政権は、これらの提案に耳を傾けようとしているかどうかは、はなはだ疑問です。
隔離施設が足りなければ、使われていないオリンピック施設を使えば良い...
そんな意見も出ていますが、なんとしてでもオリンピックは開催したいでしょうから、この提案は無理なことでしょう。
すごく広い大人数収容に、使われていない選手村は、ちょうどよい施設ではあるのですがね。
最初にかけ違えたボタンは、気がついたときにちゃんとかけ直せば良いはずです。
横浜港停泊のクイーンエリザベス号での初動対応が間違っていたことは、世界ではすでに周知のことです。
習近平中国国家主席来賓訪日のためか、中国からの観光客をシャットアウトすることなく、春節による旅行者を受け入れ、それが雪まつりの札幌におけるコロナ悲劇を生んだことは否めません。
無症状の感染者を特定して隔離する...
それがなぜできないのでしょう。
経済財政諮問会議メンバーの提言、ノーベル賞学者の方々の提言は、政府に届くのでしょうか...