岸田政権の主要政策として4つの項目が掲げられています。
- 新型コロナ対策
- 新しい資本主義
- 外交・安全保障
- 災害対応
ロシアが軍隊をウクライナに侵攻させた25日に閣議決定されたのが、二番目に掲げられている「新しい資本主義」に属する「経済安全保障」に関するもので、その詳細が決められました。
岸田政権の目玉政策とも言える「新しい資本主義」は、マスコミ等でも、その実態がいまいちつかめないという表現をされていますが、新自由主義に否定するものとして岸田政権が打ち出した経済政策だけに、従来の資本主義とは一線を画すものというイメージが強くあります。
資本主義は終わったのか...
日本では格差問題を発端に、資本主義の是非が問われるようではありますが、そもそも資本主義が否定されることはあるのでしょうか。対局に位置する社会主義が求められているのでしょうか。
言葉の定義の整理ですが、資本主義とは、働いたらその労働力に応じて報酬が得られるという制度であり、自由に経済活動を行える社会です。
モノの価格やサービス内容は、市場の競争によって変動します。
一般的には、競争によって価格はより安くなり、サービスはより質が高くなります。もっとも、需給で価格が変動することもあります。
自由経済においては、努力次第で富を得ることもできますし、その逆のこともありえます。
つまり
資本主義は「チャンスは平等、結果は不平等」
です。
資本主義の反対にある社会主義は、財産は国家が所有し、資源や労働力やモノの値段などは国が管理します。国民には労働量に関係なく、一律の対価が支給されます。
社会主義は「結果平等」しかなく、プロセスである努力の有無は、結果には全く関係ありません。
日本が資本主義であることは変わらないでしょう。
成長戦略と分配戦略
「新しい資本主義」は「成長戦略」と「分配戦略」の2分野で構成されています。
「“成長”なくして“分配”なし」ということで、岸田総理は両方が大事だということで、それぞれにおいて重点項目を立てています。
「成長戦略」には4つの項目があります。
- 科学技術・イノベーション
- 「デジタル田園都市国家構想」による地方活性化
- カーボンニュートラルの実現
- 経済安全保障
今回テーマに上げる「経済安全保障」は、この「新しい資本主義」の中の「成長戦略」に位置づけられる項目となります。
ちなみに「分配戦略」には
- 公的価格の見直し
- 民間部門における分配強化
- こども・子育て支援
があげられています。
経済安全保障
そもそも経済安全保障に関しては、メディアにおいても様々な説明がなされていて、かなり定義が曖昧な部分はありますが、「経済的手段によって安全保障の実現を目指すこと」と説明しています。
公安調査庁(PSIA)ホームページには、経済安全保障を解説した動画があります。
国際社会の中で国家安全保障を確保するカギとして、経済上の手段を用いる動きが先鋭化 しています。各国は、自国の優位性を確保するために機微な技術・データ・製品等の獲得に向け た動きを活発化させており、例えば、適正な活動を装って標的となる企業や大学等に接近し、目 的を達成する事案等が発生しています。各国は一方で、こうした活動から国益を守るために規制や取締りを強化しており、これらの動きをまとめて「経済安全保障」と呼ぶことがあります...
と書かれています。
25日に閣議決定した法案では、半導体や医薬品など国民生活に欠かせない重要な製品が安定的に供給されるよう、国に企業の調達先などを調査する権限を与えるほか、サイバー攻撃を防ぐため、電力や通信といったインフラを担う大企業が、重要な機器を導入する際に、国が事前審査を行えるようにします。
さらに、軍事に関わる技術の中から、国民の安全を損なうおそれのあるものについて、特許出願を非公開にできる制度などが盛り込まれています。また、制度の実効性を保つため、罰則も設けています。
経済安全保障に関する閣議決定事項において、具体的なことについては更に検討が必要となっていますが、経済安全保障に関して4つの柱が打ち立てられました。
- 供給網の強化
- インフラの安全確保
- 特許の非公開化
- 先端技術の研究開発
「供給網の強化」について
前述の半導体や医薬品の他にも、レアアースやニッケルといった重要鉱物、蓄電池原材料といった製品の安定的供給体制を国がチェックします。
国に、企業の調達先などを調査する権限を与えるというところがポイントです。
調達先を特定の国に依存することを避けたいとのことです。
対象となる企業は、安定的な供給に向けた生産体制などの計画を国に提出し、認定を受け、認定を受けた企業は、必要に応じて国から金融支援を受けられるようにします。
戦略的な産業基盤を国内に確保するため、半導体の国内立地を推進する法案を国会に提出し、昨年の12月20日に成立しました。
本法案により、高性能半導体等の生産施設整備等に関する計画の認定を受けた事業者に対し、新たに設置する基金からの助成等を実施することにより、事業者による生産施設整備への投資判断を後押ししていきます。
「インフラの安全確保」について
電力や通信、金融といった国民生活を支えるインフラを担う14業種の大企業を対象に、重要機器を導入する際には国が事前に審査を行います。
サイバー攻撃を受けたり、情報を盗み取られたりしないための対策で、システムに脆弱性がないかなどをチェックしたうえで、攻撃を受けるおそれが高いとみられた場合には、必要な措置をとるよう国が勧告や命令を出せるようになります。
「特許の非公開」とは
軍事に関わる技術の中から、国民の安全を損なうおそれのあるものについて特許出願を非公開にできる制度です。
現行では、特許出願すると1年半後には原則公開されますので、すべての特許を公開すると、日本企業が出願した内容を海外の企業が利用して軍事に転用するリスクがあります。
国は対象を軍事技術に絞り込み、出願内容を非公開にできるようにします。
非公開にすることによる出願者の特許収入が得られないという不利益に関しては、国が補償を行うとしています。
「先端技術の研究開発」について
優先して育成すべき重要な技術を絞ったうえで、研究開発のプロジェクトごとに官民が参加する協議会を設けて、協議会の参加機関同士で過去の研究データなど必要な情報を共有することで技術の育成を促すことにしています。
また、制度の実効性を保つため、罰則も設けられています。
重要インフラの対象の事業者が重要機器を導入する際に適切な届け出を怠った場合や、非公開の対象となる重要技術の発明で、関連する情報を漏らした場合には、いずれも2年以下の懲役か100万円以下の罰金とします。
アメリカと中国の間でハイテク技術の覇権争いが激化するなか、政府としては、欧米と足並みをそろえる形で先端技術の流出防止や、国内での重要物資の確保といった経済安全保障を強化するねらいがあります。
岸田政権は、小林鷹之経済安全保障担当大臣を置くほどに、経済安全保障には力を入れています。
経済的手段によって安全保障の実現を目指す...
経済安全保障は、英語表記では「Economic security」となり、また、経済的安定(Financial security)とも呼ばれ、国民の生命・財産に対する脅威を取り除き、経済や社会生活の安定を維持するために、エネルギー・資源・食料などの安定供給を確保するための措置を講じ、望ましい国際環境を形成することを目的とした政策になります。
一方で、経済界などからは、ビジネスへの行き過ぎた規制とならないか懸念の声も出ていて、政府は自由な経済活動とのバランスをどうとるのか、運用の在り方が問われることになりそうです。
また、補助金が絡むだけに、政権と強いつながりがある企業が強くなるという、今まであったような、政権と民間企業との負の関係がすごく気にはなります...