謎のシステム「コンビニ会計」
コンビニのおにぎりやお弁当は、毎日大量に廃棄されています。全国のコンビニで、一日あたり384~604トンの食品が廃棄されているとみられています。
スーパーマーケットや個人の商店では、売れ残って廃棄となる前に値段を下げて販売しているのをよく見かけますね。これを「見切り販売」と呼ぶそうですが、実はコンビニでは、この「見切り販売」がフランチャイズの本部から禁止されているのです。
本部からの指導は
長い目でみてお店のためにならない
近隣のお店に迷惑...
として「見切り販売」を禁止しているようで、ブランド価値を維持するためとい
う名目もあるのでしょうか。
本部の指示に反して「見切り販売」をしたら、直ちに契約が切られるそうです。
脅しですね。
廃棄するよりも売ったほうが、いくらかでも売上になりますし、必要としている人の手にも届けられます。
「見切り販売」を禁止している背景には、コンビニ独特の会計システム「コンビ
ニ会計」の存在があるのです。
「コンビニ会計」の実例
たとえば1個100円で販売するおにぎりを、原価は70円で10個仕入れたとします。10個売れると1000円、その原価は700円、単純に利益は300円になりますね。
この利益を、フランチャイズ契約で、コンビニオーナーと本部で「4:6」で分け合います。本社の取り分の方が多いのです。
この配分は、企業や契約年数によっても異なるそうです。
利益300円の場合、オーナー側に120円、本社側に180円が入ります。
もし、おにぎり2個が売れ残ったとしましょう。
その際の売り上げは、
100円×8個=800円
ですね。原価は10個分ですから700円かかってますので利益は
800円-700円=100円
先ほどの配分比率では、オーナー側が40円、本部側が60円となります。
ところが、コンビニ会計ではちょっと違うのですね。原価の計算が、売れた分だけを考慮すれば良いことになっているのです。
上記の場合8個売れたので、8個分の原価560円を売上から差し引きます。
800円-560円=240円
これが配分され、オーナー側は96円、本部側は144円の配分になります。
ところが2個分の仕入れ原価は、コンビニオーナーだけが負担することになるのです。
2個売れ残った場合、オーナー側の利益は96円に対し、2個の原価140円を負担しますので、オーナー側は利益どころか44円の赤字となるのです。
ここで「見切り販売」をして、残ったおにぎりを半額の50円で販売したとしましょう。売上は
100円×8個+50円×2個=900円
仕入れ原価は
70円×10個=700円
利益は
900円-700円=200円
この場合、オーナー側の取り分は80円で赤字にはならないのですが、本部側の取り分は120円となり、2個を「見切り販売」をした方が廃棄するよりも少なくなるのです。
これを本部側は嫌がっていて、「見切り販売」を禁止して廃棄させているのです。
「見切り販売」禁止は圧力では...
さすがに裁判所は、本部側からの「見切り販売」妨害を違法としています。
2009年6月22日、公正取引委員会は、セブン‐イレブン・ジャパンに対し、独占禁止法第20条第1項に基づき、排除措置命令を出しました。商品価格を値引いて売り切る「見切り販売」を制限したことが、「優越的地位の濫用」規定に抵触するとしました。
排除措置命令を根拠に、同年9月には「セブン-イレブン・ジャパン」の加盟店経営者が、「見切り販売」を制限され利益が減ったとして、同社に損害賠償を求めて、東京高裁に集団提訴しています。
この裁判は、2014年10月、最高裁が「見切り販売の妨害は違法」とする高裁判決を確定させました。
この構図を、消費者はどう思うのでしょう...
食品ロスが生まれる構造
- 新商品が出れば、本部から“多く入れてください”と依頼が来る。過剰発注が常態化している...
- “恵方巻き”や“うな重”などの季節商品は、その日にしか販売できないのに、過剰なほど発注せざるを得ない...
- 予約商品に関しては、必ず「前年超え」が基本...
- 商品棚の商品が売り切れれば、本部に、売り切れた時刻が通達される...
- 長い時間、売り切れが続くと、本部から督促が来る...
過剰出店、過剰発注、過剰廃棄が常態化しているのがコンビニエンスストア業界だといえそうです。
まさに「食品ロス」はコンビニ業界の構造的問題だと言えますね...