18歳選挙権付与からの「公共」という授業
中央教育審議会の専門部会は、2022年度以降に導入する高校の次期学習指導要領の地理歴史・公民について、「現代社会」という科目を廃止して「公共」という科目を新設することになっています。
学習指導要領とは、文部科学省から、幼稚園と大学を除く全ての学校で教える内容を定めたものです。国公立や私立に関係なく影響を及ぼすものです(私立は比較的影響力は弱い)。
小中高別に教育教科が規定されていて、第二次世界大戦後の1947年から大幅改正、一部改正が繰り返されてきています。
小学校で戦前の「修身」が廃止になったり、家庭科が男女共修となったのは1947年の学習指導要領によるものです。
今回注目する高校科目は「公民科」です。
現行の学習指導要領(直近2018年改定)では、公民科は「現代社会」1科目か、「倫理」「政治・経済」の2科目が必修となっています。
この中で「現代社会」という科目がなくなり、2022年度から順次導入される必修科目が「公共」です。「現代社会」が「公共」に変わるのです。
文部科学省の説明では、18歳から選挙権が与えられたことから、高校生のうちに社会のさまざまな活動に参画できる力を養う必要があるとして「公共」という科目を新設したとしています。
ここで「18歳」というキーワードが出ました。今年から、成人年齢が「18歳」に引き下げられます。このことと学校教育は、密接な関係があります。そのことも、頭に入れて「教育」を考えてください...
世界史と日本史が一つに、時代は「ペリー来航」移行
「公共」では、法律や経済の仕組みに加え、社会保障の現状などを学び問題点を理解することを目的としています。「現代社会」は廃止するのは、その学習内容が重複するためとしています。
また、現行の学習指導要領(直近2018年改定)では、地理歴史科は「世界史A」「世界史B」から1科目、「日本史A」「日本史B」「地理A」「地理B」から1科目が必修となっていますが、これをすべてを「地理総合」「地理探求」「歴史総合」「日本史探求」「世界史探求」に変更します。
世界史必履修を見直し、世界とその中における日本を広く相互的な視野から捉え近現代の歴史を考察する「歴史総合」、持続可能な社会づくりを目指し、現代の地理的な諸課題を考察する「地理総合」を必修として設定するとともに、発展的に学習する選択科目として「日本史探究」、「世界史探究」、「地理探究」を設定します。
「歴史総合」では、近現代史の理解度が低いことから18世紀以降を中心に日本史と世界史を関連づけて学ぶように指導しています。近代化やグローバル化の流れを学習の中心に据えるものと説明しています。近代以前の歴史も含めてより深く学習する「日本史探究」「世界史探究」は選択科目とします。
「歴史総合」は、時代で言えば「ペリー来航」以降の近現代史を学ぶことになります。選択次第では、古墳・飛鳥・奈良・平安時代、今年の大河ドラマの鎌倉、そして室町から戦国時代まで、学ぶことがなくなるかもしれません。
前近代と呼ばれる江戸末期以前の歴史は、教科書にもよりますが、2~3ページにまとめられるそうで、小中学校では「前近代」は従来どおり学習します。高校では、日本史と世界史が一緒になりますが、割合は世界史の方が半分以上を占めているそうです。
近現代を詳しく扱うだけに、今までも問題となってきた「教科書問題」は、より社会問題化しそうです。
「地理総合」も新たに必修科目とし、環境問題など、全世界が直面する共通の課題と国際協力の在り方などを学ぶこととしています。地図情報をコンピューターで加工する「地理情報システム(GIS)」の使い方も学習するようになっています。
選択科目の「地理探究」は世界の民族・宗教や産業、資源などをより深く知ることを目指します。
「公共」というネーミングの是非
この「公共」というネーミングに、高校教科としてどうしても違和感を感じてしまいます。
「公共」の意味は、社会一般やおおやけという意味があり「個」や「私」の対置するものとされています。
「公共」を必修科目とするための政府による説明文書には「倫理的主体となる私たち」という言葉が四角囲いで強調されていて、それを考える上で
- 公共的な空間を作る私たち
- 公共的な空間における人間としての在り方生き方
- 公共的な空間における基本的原理
を中心に据えることが書かれています。
この学習指導要領改訂の背景にはなにがあるのでしょうか...
他にも変わる高校授業