国営放送と公共放送
国営放送、公共放送に関してNHKホームページでは
電波は国民の共有財産であるということからすると、広い意味では民放も公共性があるということになりますが、一般的には営利を目的として行う放送を民間放送、国家の強い管理下で行う放送を国営放送ということができます。
これらに対して、公共放送とは営利を目的とせず、国家の統制からも自立して、公共の福祉のために行う放送といえるでしょう。
NHKは、政府から独立して 受信料によって運営され、公共の福祉と文化の向上に寄与することを目的に設立された公共放送事業体であり、今後とも公共放送としての責任と自覚を持って、その役割を果たしていきます。
とあります。
電波の公共性に関しては、先週「NHKを考える『Eテレ売却議論から見る電波オークション』」で、電波は国民の公共財産であることをご紹介しました。
上記NHKホームページにもある「電波は国民の共有財産である」ことから、民放も含め、放送全てが公共放送と言えるのかも知れません。
スポンサーを持たず、国民の受信料で成り立つNHKだからその公共性が強いと、元NHKアナウンサーでジャーナリストの堀潤氏は指摘し、だから、NHKは一般の人たちが、放送機材や放送システムを利用できるようにすべきだと主張しています。
国営と公共を定義づけしてみますと...
国営放送:統治権をもつ国家が運営する放送機関
公共放送:公共のため国家とは独立して運営する放送機関
NHKは、人事や予算は国会の承認を必要としますが、国会は国民の代表で成り立っているところなので、国が管理しているものではないから国営放送ではないという理屈は通ります。
国会が、真に国民の代表機関であればよいのですが、どうも党議拘束があることで運営されている国会が、国民の代表機関と言えるのかどうかは、甚だ疑問です。
NHKの予算は経営委員会で決められます。
その経営委員会は、12人の経営委員で構成され、国会の同意を得て任命されます。任期は3年となっています。
放送法は経営委員の条件として「公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者」と定めていて、政党役員や新聞社などの役員は委員になることができず、5人以上が同じ政党に属してはいけないと規定しています。
常勤以外の委員については兼職が認められており、思想信条を公にすることは禁止していないとのことです。
NHKの会長は経営委員会12人で選出、現在は、元みずほフィナンシャルグループ会長の前田晃伸氏です。
ただ現実として、籾井勝人元NHKは会長は竹島問題・尖閣諸島問題の質問についてこう答えています...
日本の立場を国際放送で明確に発信していく、国際放送とはそういうもの。政府が「右」と言っているのに我々が「左」と言うわけにはいかない...
“国の意向には逆らえない”発言をしているところから、NHKの存在は、建前と実際は違うことが伺えそうです。
NHKと政権の関係
NHKの体質に関しては、N国党の立花孝志氏が、2005年4月に週刊文春に「NHK現役経理職員、立花孝志氏懺悔実名告白、私が手を染めた裏金作りを全てお話しします」という衝撃的な題で実名の内部告発をしています。
その後、立花氏は、NHKを懲戒処分を受け依願退職して、現在に至っています。
当時の文春記事を、立花氏は自身のブログで全文を公開しています。
ameblo.jp当時のNHK会長は、絶大の力を持った海老沢勝二氏でした。
立花氏の話はこれ以上は深堀りしませんが、日本に国営の放送局がないのは、戦後GHQの方針によるものです。
やはり第二次世界大戦中の大本営発表の広報となったことが、米国としては憂慮されたのでしょう。
しかし、時の政権と、本来政権と独立に地位にあるべきNHKとの関係は、前述の籾井元会長発言からもわかるように、かなり怪しいものがあり、今でも、世間の目からは、NHKは政権の広告塔になっていると映っていて、多くの批判を受けています。
報道機関に関しては、政権との距離感を鮮明にしているところもあり、フジサンケイ・グループは政権寄りで、読売と自民党の関係の深さは周知のとおりです。
NHKと政治の関係では「NHK番組改変問題」がよく知られています。
NHKが2001年1月30日に放送したETV特集シリーズ「戦争をどう裁くか」の第2夜放送「問われる戦時性暴力」に関して、右翼系の政党が番組放送中止を街宣車によって抗議したことが、当時大きな話題となりました。
政権との関係に関しては、2005年に朝日新聞が、中川昭一経済産業大臣(当時)と安倍晋三内閣官房副長官(当時)からNHK上層部に、この番組の編集・内容に関して圧力があったと報じています。
NHKコンプライアンス推進委員会に「政治介入を受けた」との内部告発があったともあります。
問題となった番組の内容は、慰安婦問題などを扱う民衆法廷(模擬法廷)の日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷(略称:女性国際戦犯法廷、主催:VAWW-NETジャパン))に関する一連の騒動についての内容です。
朝日新聞の言い分を、NHK側は全面否定して、政治家の圧力はなかったとしていました。
放送後にVAWW-NETジャパンが、制作協力時に期待していた放送内容と実際の放送内容が大きく異なったとしてNHKを提訴しましたが、最高裁まで争われた結果、VAWW-NETジャパン側の敗訴が確定しています。
この一連のことについてこんな記事を見つけました。
「LITERA」というWeb雑誌2019年2月20日「永田浩三さんに聞いた:NHK『番組改変』と『慰安婦』問題の今」と題した記事で、その中に永田氏の言葉として
後の朝日新聞の報道などでも明らかになっていますが、政治家たちはNHK幹部に向かって「こう変えろ」と指示したわけではなく、「公平・公正にやってくれ」「勘ぐれ」などという言葉をかけたようです。つまりは「忖度しろ」ということですよね。
その結果、大きく分けて、番組から三つの要素が消されました。まず、女性法廷の中で語られた、当事者である元「慰安婦」の女性たちの被害証言。もう一つは、日本政府がそれまでまがりなりにも「慰安婦」の存在を認めて施策をとってきていたという、その事実。そして、実際に戦場で女性たちへ性暴力を行った日本軍兵士たちの加害証言。この三つです。つまり、慰安婦問題の根幹の部分、加害性を限りなく薄め、問題の本質から目をそらす番組に変えさせたといえると思います。
私はその圧力に対して、プロデューサーとして最終的に抗うことができなかった。
結果として「改変」に荷担することになってしまったわけです...
記事にあるがまま転載しました。
maga9.jp「LITERA」という雑誌名からもわかるように、左派色が強い記事が多いということは、ここで述べておきます。
NHKに限らず、テレビの報道のあり方、新聞も含め報道機関の存在意義が問われています。
記者の政権への質問をする姿勢を見て、今の政権の記者会見の在りようにしても、記者が政治家から情報を取るプロセスにしても、公平性を欠く事象が多く見られるのは事実です。
また報道内容が、果たして中立なのか、脚色が混じってないのか、政権側の意図が忖度されていないのか、甚だ疑わしい限りの印象があります。
それは私個人の意見ではありますが、世間の目を通して報道機関を見たとしても、おそらく同じよな感想にたどり着くのではないでしょうか。
今こそ、私達国民の政治リテラシーが試されているときだと思います。
今年は総選挙がある年だからです。
政治の本当のあり方を考え、誰に向けての政治なんかを考え、それを実行してくれるかどうかを見極める眼を養うことが大事です。
日本は間接民主主義、代議員制度による国会なのですから。一度決まった勢力図はそう簡単にはリセットできませんからね。
情報リテラシーとも言えるでしょうか。
報道機関の情報を鵜呑みにしない姿勢が求められます。
思考を第三者に依存しないことです。
フェイクニュースが反乱する中で、国民一人ひとりが自分の意志で判断する賢さを持つことが大事で、そのことがこれだけ強く求められる社会になってきていることを、痛感します...