オミクロン株まん延と在日米軍基地
世界では、新型コロナウイルス変異種「オミクロン」株の感染まん延は、ピークアウトしてきたと伝えられています。「ゼロコロナ」ではない「withコロナ」の道を歩むことで人の動きを止めずに経済を復活させ、“コロナ以前”の社会を取り戻しつつあるように思えます。
一方日本では、これから新型コロナウイルス変異種「オミクロン」株の感染者が拡大していきそうで、「withコロナ」の方向性が見いだせず、再び「まん延防止等重点措置」を発動して人々の動きを制限することを選びました。
「医療機関の逼迫」がまん延防止等重点措置の発動要因になっていますが、政府が、厚生労働省が、日本医師会が、医療体制改善に何をしてきたのか、このままでは、変異種が出るたびに、医療体制は逼迫し続けることになります。
永遠に日本では、人の行動制限しかできず、経済復活は望めなくなりそうです。
このことについてはこの情報誌でも、かなり指摘してきているのですが、コロナ対策の中心にいる人たちの議論が、「利権」というものを中心に置いている限り、コロナ対策の方向性は、この国の行く末や国民には向かないような気がしますね。
この「オミクロン」株が日本にまん延しだしたきっかけとしてあげられているのが「在日米軍基地」の存在があるとされています。
空港等水際対策は万全に行われてきたにもかかわらず国内基地から染み出してきている...
うまい表現があるものですね。
在日米軍は、日本全体に4324人駐留しています。
基地は全国9ヵ所、沖縄県に3ヵ所1680人が駐留しています。
まん延防止等重点措置発動の山口県岩国市の岩国基地には589人、長崎県佐世保市の佐世保基地には114人、東京都横田基地には179人、神奈川県横須賀基地には245人、まん延防止等重点措置発動の青森県弘前市がある青森県には三沢基地があり、179人の米軍駐留者がいます。
キャンプ富士がある静岡県も、まん延防止等重点措置発動を、国に申請してます。
今回急激に「オミクロン」株がまん延した場所には、すべて米軍基地があります。
日本共産党機関紙「しんぶん赤旗電子版」の記事を紹介しておきます。
なぜ日本は、米軍に対して、基地内隊員の行動自粛を強く要請できないのでしょうか。なぜ米軍隊員の検査隔離を、強く要請できないのでしょうか。
そこには「日米地位協定」の存在があると、指摘されています。
日米地位協定ってなに?
あらためて、このことについて検証してみたいと思います。
日本と他国との地位協定の違い
報道によれば、米国から日本に入国する時は、新型コロナウイルスの検査をせずに入国することができますが、日本から米国に入る際には、米国の方で検査が行われるそうです。
また、米国軍関係者が韓国に入国する際には、韓国側の検査を受けることになっているそうです。
日本においては、ワクチン接種済みということで、施設内の移動は自由となっています。日本への入国後の検査は、米国主導で行われます。
一方、同じ米軍が駐留している韓国では、韓国入出国どちらも検査があり、韓国では入国後、ワクチン接種の有無に関わらず10日間の隔離が義務付けられていて、隔離終了前の検査は、米国ではなく韓国側が行うことになっています。
なに?この不公平感は...
韓国の米軍基地は、首都ソウル近郊にあり、米軍基地内の感染は韓国首都の危機でもあるので、大統領自ら米国へ強い要請をしているそうです。
日本の場合、米軍基地が沖縄県に偏っていることが、米軍に強く出なかったということなのでしょうか。
韓国と違って首都東京から離れているので、米軍との交渉は、国主導ではなく自治体任せなのでしょうか。
この背景には「日米地位協定」があるという指摘もあります。
不公平という観点から見てみますと
日本と米国との関係だけが、日本国内法は原則不適用、管理権に関しては日本側の立入り権は明記されていません。米軍の訓練・演習に関しては、航空特例法等により規制することができず、航空機事故が起きた場合、捜査等を行う権利を、日本側は行使しないことになっています。
これを他国の場合で見てみますと、それぞれの国の国内法は適用されるようで、管理権に関しては、その国側の立ち入りを何らかの形でも認められていて、訓練・演習に関しては、その国の承諾を必要とし、あるいは何らかの規制が設けられています。航空機事故に置いても、その国の警察等、調査に動くことが可能です。
沖縄県のホームページには、この日米地位協定と他国の地位協定の違いをPDFでまとめたものを掲載しています。
https://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/kichitai/tyosa/documents/r2_p15.pdf
そこに書かれていることを、一部抜粋しますと...
ドイツ・イタリア・ベルギー・イギリスのヨーロッパ4カ国では、自国の法律や規則を米軍にも適用させることで、米軍の活動をコントロールしていることが分かりました...
また、騒音軽減委員会や地域委員会の設置等によって、地元自治体からの意見聴取や必要な情報の提供が行われているほか、受入国側の基地内への立入り権も確保されています...
この文章だけでも、日米地位協定が、米国側からの一方的なものであることがよくわかりますが、なぜ日本だけ、このような不当な扱いをされなければならないのでしょう...
そもそも地位協定とはなにか
日米地位協定とは、日本に駐留する米軍の地位についての取り決めです。
米軍の地位、つまり、戦争中でもないのに日本に他国軍が駐留することの存在意
義を規定したものと言えます。
外務省ホームページに「Q&A」形式で、その答えが載っています。それによれば
日米地位協定は、日米安全保障条約の目的達成のために我が国に駐留する米軍と
の円滑な行動を確保するため、米軍による我が国における施設・区域の使用と我
が国における米軍の地位について規定したものであり、日米安全保障体制にとっ
て極めて重要なものです。
とあります。
「我が国における米軍の地位」と書いてありますね。
駐留される日本としては、できるだけ自国法を適用させて行動を制限したいですし、駐留する米国側としては、できるだけ行動を制約されたくはないですよね。
つまり、日米地位協定は、米軍が日本の施設等を使うとき、堂々と大手をふって、日本の施設や区域を使用できるようにしたものだとも読み取れます。
毎日新聞の特集記事「日米地位協定」(2021.12.21)に、日米地位協定の歴史を含め解説されています。
mainichi.jpこの記事にある文章から一部抜粋しますと
地位協定は28条で構成される。2条で日本国内の基地使用を米側に認め、3条で基
地内の管理・運営などのために米側が「必要なすべての措置を執ることができる」
としている...
とあります、さらにその具体例として
基地返還時に米軍が原状回復義務を負わない
米軍の船舶・航空機・車両や米軍関係者とその家族が基地間の移動を自由にでき
る
米軍人は出入国管理法の適用から除外され旅券や査証(ビザ)なしで日本に出入
りできる
米軍が日本に持ち込む品に関税を課さない
米軍関係者による公務中の犯罪は米軍が裁判権をもつ
という取り決めになっているようです。記事はさらに
協定に実効性をもたせるため複数の特別法も制定されている...
とあります。この“実効性を持たせるため”の複数の特別法が、どうも“くせも
の”のような気がします...
「地位協定を考える~なぜ日本はこんなに立場が弱いのか...(2)」に続く・・・