姓(せい)と氏(うじ)...
一般的に「夫婦別姓制度」と表現していますが、法務省では「選択的夫婦別氏(うじ)制度」と表現しています。
自民党内でこの制度に反対している議員は、「別氏(うじ)」の表現を使います。保守派の人たちは「別氏(うじ)」という表現を意識して使っているようですね。
どうやら「姓」と「氏」は違うもののようです。
ここに、この制度の根本的な捉え方、この制度を反対している人たちの本質があるように思えてきました。
首相官邸ホームページに、この「姓と氏」の違いを説明しているPDFが掲載されています。
首相官邸ホームページ内にある「皇室典範に関する有識者会議」のページに「平成17年11月24日」の日付で、「皇位継承を報告書」というのがあり、そこにはどうやら、今話題の男系女系に関する問題を議論をしたものが書かれているようです。
その報告書に「参考資料」が付記されていて、その13番目に「姓(せい)について」と題した資料がついています。
この報告書は、計17回行われた会議の総まとめになっていて、「姓(せい)について」の資料は、第8回目の会議のときに添えられたもののようです。それがこの資料です。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousitu/dai8/8siryou4.pdf
なお、この平成17年11月24日付の報告書が作成された第17回皇室典範に関する有識者会議メンバーは、話題の日本学術会議(SCJ)会長(当時)であった吉川弘之氏が座長で、政府側出席者には、小泉純一郎総理(当時)や安倍晋三官房長官(当時)の名前があります。
「姓(せい)」に関する説明は、明治以前と明治以降に時代を区切ってされています。
「姓(せい)」ができたのは7世紀末の律令制度導入時期に、天皇から賜与(しよ)されたものとなっています。
それゆえ、天皇や皇族には「姓(せい)」というものはないのです。
「我が国においては、姓は、臣民たることの表象」とされていて、「奉仕や忠誠の度合い」に応じて、天皇から賜与されるものだそうです。
さらに「姓は、公式の呼称とされ、戸籍への登録、公文書における表記等に用いられた」と資料には書かれています。
もうここまで読んで、保守派の人たちがなぜ「姓(せい)」を大事にしているかが、なんとなくわかってきたような気がします。
天皇が臣民に姓を与えることで、天皇を頂点としたヒエラルキー社会を形成する、それを徹底するために国家を「家族」にたとえ、家族における家長を敬う思想を根付かせたのでしょう。
戦前においては、国家が国民を統制把握するには「家単位」の方が、都合良かったこともあるのでしょうね。
「家(いえ)制度」が蔑ろ(ないがしろ)になることは、天皇を中心とする国家感を揺るがしかねないと思っているのでしょうか。
夫婦別姓問題を語る上で、反対派が「家(いえ)」の考え方を取りあげてくることに、強い説得力を感じていなかったのですが、それは説得どうこうという話ではなかったようですね。
今は個人が尊重される時代であって、何事も個人が中心に社会は成りたっているのですが、いまだに「家」が中心となっている制度こそ、「時代にそぐわない」と見直すべきではないでしょうかね。
氏(ウジ)に関しては、資料には
古代において、祭祀・居住地・官職などによって結合した擬制的同族集団(祖先・血統を同じくすると信じる擬制的な血縁集団ともいわれる 。大和政権で )は官職・地位はウジによって世襲され、土地・人民はウジが領有
とあります。
氏(ウジ)名は ウジに対して天皇が賜与したものとなっていて、古代のウジ名は、地名(葛城 平群 蘇我など )や職掌名( 中臣(神事)、 大伴・物部(軍事))に由来していると説明されています。
資料には例が載っています。
学校の歴史教科書で習った人物ですが、この場合、姓(せい)は「藤原朝臣」になるそうです。「不比等」は“実名”になるとしていますね。
さて姓(せい)には2つあります。「せい」ともう一つが「カバネ」です。
藤原朝臣不比等の場合
「藤原」が“姓(せい)”
「朝臣」が“カバネ”
「不比等」は“実名”
だそうです。
さて「カバネ」ですが、漢字では「姓・戸」という文字になっています。
やはり先程の資料によりますと
カバネは、ウジの職務や家柄などの公的な地位を示すものとして、ウジの首長(氏の上)に対し、天皇から賜与されたもの。5世紀末頃に成立し、7世紀末頃までには世襲されるようになったと見られる。
とあります。
ん~ん、資料には、このあと明治以降の制度についても書かれているのですが、基本的には、この「“天皇に賜与された”姓(せい)」というところに、強く光があたっているような気がしますねぇ。
自民党を支持する日本会議や神社本庁などは、明確に、選択的夫婦別姓には反対の立場を表明しています。
家制度を守る立場を堅持している以上、彼らの組織票で議員になっている人たちにとっては、絶対に選択的夫婦別姓制度には賛成できないのでしょうね。
選択的夫婦別姓制度を実現するには、どれだけの賛成派議員を国会に送り込むしかないですね。
それが唯一、国民にできることですからね...
この選択的夫婦別姓に関しては、更に詳しく、ブログでは書けないところまで突っ込んで、来週月曜日配信の情報誌「ら・ぽ~るマガジン」に書こうと思います。よろしければ読んでみてください。月額330円(税別)、初月は無料になっています...